「酒さ(rosacea)」の怖さと治し方の最新情報
「ほっぺが赤い、お酒を飲んだわけでもないのに。日焼け、それともなにかのアレルギー?」。 はじめはその程度の認識で、少しファンデーションを濃くして隠していた顔の赤み。それが日を追うごとに赤みが強くなり、顔全体に広がり、皮膚科の診療で「酒さ」という聞きなれない進行性の慢性疾患と診断され、さらに原因不明の病気で治療方法が存在しないと知って愕然とする方が大半です。 中には発疹や大人ニキビと勘違いして、市販の薬用クリームで悪化させてしまう患者さんもいます。
恐ろしい「酒さ」による赤ら顔の進行
はじめは顔の中心部が赤くなり、この時点では表皮に近い部分での血管拡張による赤みであるため、とりあえず化粧で隠してしまう患者さんがほとんどです。しかし、「酒さ」の恐ろしいところは、「進行性」であるということです。放置しておくと、やがて鼻近辺に発疹が出現し、頬から、顎、額へと広がっていきます。この進行速度には個人差があるため、一概ではありませんが、確実に悪化するものであり、良くはなりません。 湿疹やニキビ、アトピー性皮膚炎の合併症を引き起こすケースも多くみられます。 「顔が火照る」あるいは「顔が乾燥する」と感じたら、酒さの、危険信号です。酒さは早め早めの対処が肝心です。
酒さによる赤ら顔の6つのパターン
酒さは、赤ら顔の進行度合と発現の違いによって6つのパターンに分類されています。 一般的な初期症状である毛細血管が拡張し顔が赤く状態(紅斑・毛細血管拡張型)、さらに進行しニキビのようなぶつぶつが見られる状態(丘疹・膿疱型)、そして見るも無残に毛穴の開大が大きくなり鼻が凹凸不整に肥大した状態(腫瘤・鼻瘤型)の3段階です。さらにひどくなると目の周囲の腫脹や結膜炎、角膜炎を併発した眼型や肉芽腫性酒さ、電撃性酒さがあります。いずれも酷くなる一方なので、早期発見が肝要です。
海外に多い酒さ患者
日本では、酒さは非常にマイナーな病気ですが、海外では平均して人口当たり3%もの患者が存在する認知の高い病気です。特に欧米に多く、アメリカでは2017年5月時点で約1600万人もの患者が酒さによる赤ら顔に悩んでいます。アメリカのドラマや映画で、赤ら顔の白人俳優が多いことにお気づきかと思います。顔が命の業界でも、アメリカでは隠し切れないほど、酒さの患者が多いのです。このため日本ではあまり治療技術は進んでいませんが、アメリカでは酒さについて多くの研究がなされ、様々な治療法や薬による治験が積み上げられています。
日本には海外で検証中の情報が時間差で入ってくるため、効果が期待される最先端の治療法も、すでに効果が無いと立証された治療法も、ごちゃまぜに扱われているのが現状です。日本では30代から60代の女性に発症例が集中しているためホルモンバランスとの関連性が言及されているものの、絶対的な症例数が少なく、日本皮膚科学会が、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会と共同で作成し、厚生労働省から公表された「接触皮膚炎診療ガイドライン」の中で少し触れられている程度です。
酒さに関する日本での一般論と間違った治療方法
酒さの原因として
- 精神的ストレス
- 日光の刺激
- カフェインやアルコールの摂取
- 刺激の強い食物の摂取
- 睡眠不足
- 偏った食事
- 極端な温度変化(サウナなど)
など、多くの原因が挙げられていますが、酒さとの因果関係については立証されておらず、このように列挙した要因を眺めてみるとごく日常的な項目ばかりで、酒さの原因としてはピンとこないばかりか、ダイエットやハゲで挙げられる原因ばかりであり、一般的な健康法に過ぎません。
一方、恐いのは誤った治療法です。 一時的な吹き出物では、ステロイド剤がよく用いられ非常に効果的なのですが、酒さでは悪化させてしまうことがあります。これはステロイド性酒さと呼ばれるものであり、長期間ステロイドを塗り続けることで引き起こされる皮膚炎です。最近ではニキビや発疹のようなぶつぶつには一律でステロイドを処方する皮膚科が増えていますが、これをやると増悪させてしまうので注意が必要です。 また、アゼライン酸やメトロニダゾール外用薬は海外では使われているものの、日本では認可されていないため、欧米人と比較してデリケートな日本人に投与するとどんな副作用が発症するかわからないリスクがあります。
知って驚く、酒さの診断方法
2017年5月現在、患者を直接的に「酒さ」と断定する診断方法はありません。唯一の方法は、酒さに似た症状の診断をすべて行い、該当しないことが確認出来たら「酒さ」として認定されるといった消去法です。 ざっと挙げただけでも
- ニキビ
- 接触皮膚炎
- 脂漏性皮膚炎
- 皮膚筋炎
- 口囲皮膚炎
- 光線過敏症
- 尋常性ざ瘡
- 蝶形紅斑
- 顔面播種状粟粒性狼瘡(LMDF)
- 好酸球性膿疱性毛包炎(EPF)
- サルコイドーシス
これだけの病気について診断を受け、該当しなければ「酒さ」と判定されます。これは、酒さとしての特異的なマーカーが発見されていないためです。つまり、酒さは現代の最先端医療を持ってしても、酒さだけでない疾病まで、酒さと判定してしまう危険性があるのが実態です。
酒さに有効と言われる治し方
このように日本では事例が少なく、あまり研究されていないため、酒さによる赤ら顔に対して決定的な治し方が存在しないのが現状です。もちろん海外でも、まだ100%治るという画期的な治し方は開発されていません。しかしながら、アメリカでは1600万人も患者がいるため、様々な治し方が研究されており、一定の成果を上げています。残念なことに、アメリカで開発された最先端の酒さの治し方は日本では保険適用外の自由診療扱いとなっています。